「交渉の達人」と呼ばれる担当者がたまに病院にいらっしゃいます。
業者の矛盾を突き、病院の要求を強気に発信し、
ときに声を荒げたかと思ったら次の瞬間には菩薩のような顔で相手を懐柔する。
果たしてこのような「交渉の達人」は「コスト削減の達人」なのでしょうか。
私はそう思いません。
むしろ交渉相手は表向き屈服したように見せて、隙をみては利益が見込めるものを
へりくだったように見せながらビジネスを成立させていると考えています。
こんな相手方が発言を聞いていたら要注意です。
(交渉担当者が「業者はこんなことを言っています」と話していたらもう危険水域でしょう)
私たちには「交渉の達人」はいません。
その代わりに、「科学的な交渉」ならびに「科学的な説得」活動をするコンサルタントがいます。
私たちのノウハウは「交渉の達人」になりたくない普通の、そして多くの用度担当者にこそ活きてくると確信しています。
病院にとって合意可能な範囲をあらかじめ決定しておき、その了承を得る努力をする作業(院内活動用)
ペースメーカーの購入金額が
ドンドン増えてる!
交渉しろ!交渉!
交渉の余地はあるのか?
うちの病院だったら
いくらまで望んでいいの?
ZOPAを元にした交渉をしたとして、仮に交渉が成立しなかったケースではどのように対応するのか決めておく作業(院内活動)
先生、交渉が難航した場合
どうしましょうか?
① 違う安いメーカーにしていいよ。
② うーん、それでも今のメーカーの
ものを使いたいな。
③ 新しいメーカーは嫌だけど、いまある
中から一番安いのに集約しようか。
人がなにかを考えようとした際(認知)、バイアス(偏り)が生じてしまうこと。
6割引は安いね。
いつも4割引で限界とか
言ってたじゃない。
これで買いましょう!
割引率は
大きいみたいだけど…
これって100円ショップ
でも売ってそう…
POINT
「半値八掛け2割引」…医療業界には定価が存在するものが多くありますが、その定価に意味はありません。これからは定価を無視して同種品の見積もり価格を比較材料にしてください。
本命の要求を通すためにまず簡単な要求からスタートし、段階的に要求レベルを上げる方法。
(応諾コストの小さい、誰もが応諾するような依頼・要請をする)
ごめんね、忙しいところ悪いんだけど、
ちょっとこの荷物をあそこまで運んでもらえない?
(受け手は通常快く応諾し、実行する)
いいですよ! これくらい!
(お礼を述べた上で第1依頼よりも応諾コストの大きい本命の要求をする)
ありがとう、助かったわ。でも実はもう一つ荷物があって、
そっちの方が重いんだけど、それもお願いできる?
(第1依頼を受けたことで自分が協力的な人物と定義したことで
第2依頼も応じざるを得なくなります)
うーん、わかりました、いいですよ。
最初の要請が応じかねるほど大きなときには多くの人はその要求を断るが、その後に小さな要請があれば応じてしまう。
(相手がどうせ受けないだろう過大な要請)
先生、ドラッグステント安いメーカーに切り替えてもいいですか?
(拒否)
それは無理よ。事務には同じものに見えるかもしれないけど
用途も使い勝手もぜんぜん違うんだから。
(現実的な本命の要請)
そうですよね。では先生、PCIのバルーンカテーテルもやはりそうでしょうか?
たくさんあるので集約など検討できませんでしょうか?
(通常であれば拒否するが、一度断っているので
再度拒否するのはストレスがかかる)
そうだね。たしかにバルーンはどこでも同じようなものだから
価格勝負させてみようか。